2016年6月12日日曜日

第8章 緩和時間というのはどれくらいの長さなのか


今回は緩和時間ついて考えていきます!

前章でご紹介しましたが、山の上に登る方が、降りるより時間がかかるということはおそらく簡単で理にかなった考え方です。
 

このことは、T1のほうがT2よりも長いという事につながり、概念としては、T1T2よりもだいたい、2510倍くらい長くなります。


実際の値でいうと、生体組織では、T1は約3002000msecT2は約30150msecになっています。



縦緩和と横緩和が正確に終了したことを正確に示すことは困難であり、T1T2は緩和が完了した時間としては決められません。


そのかわりに、T1は元の縦磁化の約63%になったときの時間として決められます。

T2は横磁化が元の値の37%に減少した時の時間です。


これらのパーセントは信号強度を表す数学の方程式から導かれます。

63%=1-1/e
37%=1/e 

ここではこれ以上詳しくは検討しません(ただし1/T1が縦緩和率、1/T2が横緩和率とも呼ばれることは覚えておいたほうがよさそうです)。

以前には、緩和時間を測ることで組織によっては特異的な結果が得られると信じられていました。しかし、各組織の緩和時間は重複することが多く、また、検査に使った磁場の強さによってもT1が異なることから、このことは間違っていることがわかりました。


緩和時間が長い/短いとはどういうことであり、どんな組織が長い/短い緩和時間を持っているのでしょうか。



次の図を見てください。どんなことが描かれていますか。


 (液体は長いT1と長いT2を持っている。壁にかかっている時計に注目。

ハイボールなどの一気に飲み干すようなものではない飲み物(long drink)を飲んでいる人たちがいます。

いつも混んでいるお気に入りの人気のバーに行って、ハイボールを注文すると、それがでてくるまでしばらく待たなくてはなりません。

このことをT1が長いというように考えます。やっとハイボールがでてくると、それを飲むのにまた時間がかかります。

そうです、T2も長いのです。

そして、水/液体はT1T2が長いという事を忘れないで覚えておきたいものです。





図を見てください。ハンバーガーを買っている人がいます。

 (液体/水と比べると、脂肪はT1T2も短い。

これには普通脂肪が多く入っていて、太ることを連想させます。

ハンバーガーはファーストフードですぐにできてきます。だから、脂肪のT1は短いというように覚えましょう。

では、T2はどうでしょう。


ファーストフード(脂肪)を食べるには少し時間がかかります。


でも、ハイボールを飲む方が普通はもっと時間がかかるでしょう。だから、脂肪は水よりも短いT2を持っていると理解してください。

水はT1T2も長いので、水っぽい組織、すなわち水分含有量の多い組織も長い緩和時間を持つことになります。


おもしろいことに、病的な組織はしばしば周囲の正常組織よりも水分含有量が多いのです。



本章はここまでです。
次章から、T1に影響を与えるものについて見ていきましょう。

よい1日を!

※「やさしいMRI」の参考文献は原文がインターネットに公開されており、誰でも閲覧可能なMRI made easy(…well almost)」です。
本ブログは、この原文を参考に記述しています。図も引用させていただいております。
原文の複製や販売を目的としたものではありません。

第7章 横磁化にはどんなことが起こるのだろうか


前章から、横磁化について学んできました。
本章でも、より詳しく学んでいきましょう。  

横磁化にはどんなことが起こるのだろうか

RFパルスが切られると、だれも歩調を揃えたままでいるように命令しなくなるので、陽子は歩調が乱れ、再び位相がずれてきます。


わかりやすくするために、このことは次の図にすべて上向きの陽子の集まりとして説明されています。


(RFパルスが切られた後は、陽子は位相が揃わなくなり、ばらばらになっていく。陽子の位相がずれていく一連の過程を上から見てみると(図の下方)、どのようにそれぞれの陽子が広がっていくのかはっきりしてくる。広がりながら、次第に同じ方向は向かなくなり、横磁化は減少してくる。)

陽子は、それが置かれている磁場の強さによってきめられている、一定の周波数で歳差運動をしているということはすでに勉強しました。



そして、すべての陽子が同じ磁場を体験します。


しかし、そうでない場合もあります。



患者がはいるMR装置の磁場は常に変化しないものではなく、また、完全に均一なものでもありません。


それは少し変化して、異なった歳差運動の周波数を作り出します。



そして、それぞれの陽子は、これもまた均一には分布していない隣り合った核からの小さな磁場によって影響され、それによっても、また歳差運動の周波数が異なってきます。


これらの内部磁場の変化はどういうわけか各組織で特有なのです。



従って、RFパルスが切られた後、陽子は一致してまとまっているようにさせるものがなくなり、歳差運動の周波数も違ってくるので、すぐにそれぞれの位相がバラバラになります。



どのくらい早く陽子の位相がバラバラになるかを調べることは、面白いことです。


一つの陽子(P1)は、10MHz1秒間に1000万回転)の周波数で回っていると思ってください。


磁場の不均一性のために、隣にある陽子(P2)は1%強い磁場のところにあるとすると、このプロトンP2の歳差運動の周波数はP1よりも1%大きく、10.1MHzになります。


5μ秒(0.000005秒:5×10(-6)秒)の間に、陽子P150回転するのに対して、陽子P250.5回転します。


したがって、この短い時間の間に、これらの二つの陽子は180°位相がずれ、それぞれの面内の磁気モーメントを打ち消し合うことになります。





縦磁化について検討したのと同様に、横磁化と時間との関係をプロットすることができます。

すると、次の図のような曲線が得られます。



 
(RFパルスが切られた後の横磁化と時間との関係を表すと、T2曲線と呼ばれる、この図のような曲線が得られる。)

この曲線は下り坂で、横磁化は時間の経過とともに消失します。


そして、おそらくあなたが期待しているように、横磁化がいかに早く消えていくか、下り坂を下ってゆくかを表す時定数があります。


この時定数は横緩時間T2です。


T2とはなんなのかをどう覚えたらいいでしょう。


T2=T×2=TT=Ttであり、これは”T transverse”を表し、横磁化の緩和を意味しているのです。


そして、この図にみられる曲線は、T2曲線と呼ばれます。




横緩和のもう一つの呼び方をスピン-スピン緩和といい、その基礎となるメカニズムであるスピンとスピンの相互作用を思い起こさせます。



T1曲線とT2曲線の見分け方はどのように覚えたらいいのでしょうか。


それには、二つの曲線を重ね合わせてみてください。

スキーのスロープのある山のように見えませんか。滑り降りる(T2曲線)の前にはまず上り坂を登らなくてはなりません(T1曲線)。




(T1曲線とT2曲線を一緒にすると、スキーのスロープがある山のようにみえる。

山を登る方が、滑ったり、ジャンプして降りたりするよりも長い時間がかかる。このことは、普通はT1T2よりも長いという事を覚えるのに役立つ。)



復習してみよう


これまで勉強したことは



  • 陽子は小さな磁石のようなものである。
  • 外部磁場の中で、陽子は平行または逆平行に並ぶ。
  • 低いエネルギーの状態(平行)のほうが、選択されやすく、このように並ぶ陽子の方が少し多い。
  • 陽子はたたかれてぐらぐら揺れているコマに似たような動きをする。
  • この動きは歳差運動と呼ばれる。
  • 歳差運動の周波数は外部磁場の強さに依存する(この関係はラーモア方程式で表される)。
  • 磁場が強い程、歳差運動の周波数は高くなる。
  • 反対方向を向いている陽子は、それぞれの方向でお互いの磁気効果を打ち消し合う。
  • 外部磁場と平行に並んでいる陽子の方が多いために、外部磁場の方向に並んだ、あるいは外部磁場に対して縦方向の、正味の磁気モーメントが存在する。
  • 歳差運動している陽子と同じ周波数のラジオ周波数パルスは、陽子にエネルギーを伝達して共鳴を起こすことができる。
  • この結果、より多くの陽子が逆平行になり、反対側にある、より多くの陽子と中和、すなわち打ち消し合うことになる。
  • RFパルスにより、陽子は歩調をあわせ、位相を揃えて歳差運動をするようにもなる。
  • その結果、新たな磁化ベクトルである、横磁化ができる。
  • RFパルスが切られた時には、
  • -縦磁化が再び増加する。この縦緩和は時定数T1(縦緩和時間)で表される。
  • -横磁化は減少し、消失していく。この横緩和は時定数T2(横緩和時間)で表される。縦および横緩和は、異なった、独立した過程であり、そのためにこれらの過程を別々に検討した。



今までのところでは、以上のようなことを理解できました。

次回は、緩和時間について考えていきたいと思います。

よい1日を!

※「やさしいMRI」の参考文献は原文がインターネットに公開されており、誰でも閲覧可能なMRI made easy(…well almost)」です。
本ブログは、この原文を参考に記述しています。図も引用させていただいております。
原文の複製や販売を目的としたものではありません。

第6章 新たに作られた横磁化ベクトルについてみてみよう


前章では、縦磁化について見てきました。次は、横磁化について見ていきましょう。

横磁化ベクトルは歳差運動をしている陽子と共に位相を揃えて動きます。

新たな横磁化は歳差運動をしている陽子と共に回転する。従って、外から見ている人にとっては、横磁化は一定の速さでその方向を変え、アンテナに信号が誘導される。)

何が起こっているか外から見てみると、新たな磁気ベクトルはあなたの方に近づき、次に遠ざかり、また近づいてくるということを繰り返します。



そして、次のことが重要です。


磁気ベクトルは、一定の状態で動き、絶えず変化することにより、電流を誘導するのです。

既にこれと逆のことについては説明してきました:陽子の動いている電荷は電流であり、陽子の磁場を作り出します。
 

逆もまた真なりで、動いている磁場は電流を作り出すのです。



このことは例えば、テレビやラジオの電波によりアンテナの中でも起こっています(実際、電磁界という言葉は電流と磁気との関係を思い起こさせます)。

これまで学んだように、MRIでは動いている、あるいは変化している磁気ベクトルがあります。これもアンテナに電流を誘導し、それがMRIで使われる信号になります。


横磁化ベクトルは歳差運動をしている陽子と共に回転しながら、アンテナに近づき、遠ざかり、また近づくといったことを歳差運動の周波数で繰り返します。


そのために、MR信号も歳差運動の周波数となります。



しかし、実際上のMR信号であるこの電流から、どのようにして画像が作られるのだろうか


画像を作るためには、体のどこから出てきた信号なのかを知る必要があります。

どうしたらそれがわかるのでしょうか。



その仕掛けは実はとても簡単です。


MRIの検査をするときには患者を磁場の中に入れますが、その磁場は、患者の体のすべての部分で同じ強度の磁場になっているわけではありません。

それどころか、患者の体の断面のそれぞれの部分で異なった強度の磁場を使います。

これはどんな役割を持っているのでしょうか



陽子の歳差運動の周波数は磁場強度で決まってくるという事(バイオリンの弦の周波数がこの弦を引っ張る力で決まるように)は勉強しました。

もしも、この磁場強度が患者の体の部分部分によって異なっていれば、体のそれぞれの部分の陽子は異なった周波数で歳差運動をすることになります。



そして、歳差運動の周波数が違うことから、異なった部位から出てくるMR信号も異なった周波数になります。



これは、あなたが持っているテレビのようなものです。

あなたが台所にいて、気に入っているテレビ番組の声を聞いている時に、あなたはその声がどこから聞こえてくるのか知っています。

その声は、あなたの部屋のテレビ台のあるところからきています。



あなたが無意識にしていることは、ある音と空間の中のある場所を結び付けているのです。



MR信号についてもっと詳しく


もしも、陽子が同調して、位相を併せて回転していて、そのまま変わらなければ、先ほどの図に描かれているような信号が得られます。





しかし、実際にはこのようなことは起こりません。


RFパルスが切られると、すぐにRFパルスによって乱されていたすべてのシステムが、もとの静かで、穏やかな状態にもどります。


新たにできた横磁化は消えていき(横緩和と呼ばれる過程です)、縦磁化はもとの大きさにもどります(縦緩和と呼ばれる過程です)。


これはどういう事なのでしょうか。



縦緩和が元の大きさに戻る理由は、比較的わかりやすいのでそれから始めましょう。



それまで逆立ちしていた陽子も、人間が普通しているように、もう逆立ちして手で歩く必要はなくなっています。


RFパルスにより、高い方のエネルギーレベルに引き上げられた陽子は、低い方のエネルギーレベルに戻り、再び足で歩き始めるのです。




(RFパルスが切られた後、陽子はエネルギーの高い状態から低い状態に戻る。すなわち、再び上を向くようになる。ここでは、この様子が順をおって示されている。この結果として、縦磁化が増加し、元の大きさに戻るようになる。わかりやすくするために、陽子は位相が揃っていないように描かれていることに注意してください



すべての陽子が全く同時にこのように動くわけではなく、これは陽子が次から次に元の状態に戻るという連続した過程なのです。



このことは、上図に陽子の集合として表してあります。


わかりやすくするために、陽子は位相がずれている状態で表されていますが、もちろんこれは始まりの状態ではありません。


どうして、そして、どのようにして、陽子が位相を揃えて歳差運動をすることをやめるのかという事は後に説明されます



陽子がRFパルスから受け取ったエネルギーはどうなるのでしょうか。


このエネルギーは格子と呼ばれている周囲に伝達されます。


そして、そのために、この過程が縦緩和と呼ばれるだけでなく、スピン-格子緩和とも呼ばれるのです。



上を向き、足で立って歩くように戻ることで、これらの陽子は、もはや、その前の状態のように上を向いている同数の陽子の磁気ベクトルと打ち消しあうことはなくなります。


そして、この方向の磁化、すなわち縦磁化は増加し、ついには元の大きさに戻ります。



この事を、時間と縦磁化の関係としてプロットして示すと、時間の経過と共に増加する曲線が得られます。

この曲線はT1曲線とも呼ばれます。


RFパルスが切られた後の縦磁化と時間の関係をグラフにすると、
このようなT1曲線と呼ばれる曲線が得られる。)



縦磁化が回復し、元の大きさに戻るまでの時間の事を縦緩和時間といい、これはT1とも呼ばれます。



これは、実のところはこの過程がどんな速さで行われるかという時間の定数(時定数)であり、実際にかかる時間そのものではありません。



これは、自転車レースで、一周の時間を計るのに似ています。


その時間から、レースがどのくらい時間がかかるかがわかりますが、正確な時間ではありません。


あるいは、もう少し科学的に言うと、T1というのは例えば放射性崩壊を表す時定数に匹敵するものです。



T1が緩和時間であるということは、タイプライターを見れば簡単に覚えられます。

(T1は縦緩和時間の事で、熱エネルギーの交換と関係がある。)

次章では、横磁化をもう少し詳しく学びます。

よい1日を!

※「やさしいMRI」の参考文献は原文がインターネットに公開されており、誰でも閲覧可能なMRI made easy(…well almost)」です。
本ブログは、この原文を参考に記述しています。図も引用させていただいております。
原文の複製や販売を目的としたものではありません。




第5章 患者が磁石の中に入った後は何が起こるのだろうか

いつもお読みいただきありがとうございます。

本章を読み始める前に、第4章の最後のこれまでに学んだことを読み返してみます。
  • 陽子は陽電荷を持っていて、回転している(スピンをもっている)。
  • そのために、磁場を持ち、小さな棒磁石とみなされる。
  • 陽子を強い外部磁場の中に入れると、外部磁場の方向と、あるものは平行に(上向きに)、あるものは逆方向に(下向きに)並ぶ。
  • 陽子はただそこで横たわっているわけではなく、磁場の方向を中心に歳差運動をしている。
  • そして、ラーモア方程式で数字的に示されるように、磁場強度が大きい程、歳差運動の周波数は高い。
  • 磁場と逆方向の陽子と並行の陽子は、お互いの力を打ち消しあう。
  • しかし、エネルギーレベルの低い、磁場と並行の(上向きの)陽子の方が数が多く、磁力が打ち消されていない陽子が残っている。
  • これらの陽子はすべて上向きであり、外部磁場の方向に総和される。
  • 従って、患者がMRの磁石の中に入った時には、患者自身が、MR装置の磁石がもつ外部磁場に対して縦方向の、固有の磁場を持つことになる。しかしながら、この患者自身の磁場は縦方向の磁場のため、直接測定することはできない。
さあ、頭に入れたところで、どんどん次に進みましょう。


患者が磁石の中に入った後は何が起こるのだろうか


患者または何かの被写体が磁石の中に入った後、ラジオ波を送ります。

ラジオ波という名称はラジオなどの無線放送で使われているような周波数域にある電磁波のことを指しています。

実際に患者に送る電磁波は、長く持続したものではなく、短時間に集中したもので、ラジオ周波数パルス(RFパルス)と呼ばれています。

このRFパルスの目的は、外部磁場の方向に並んで、なんの障害もなく歳差運動をしている陽子の邪魔をすることです。

でも、どんなRFパルスも陽子が並んでいるのを乱すことができるわけではありません。
そのためには、陽子とエネルギーの交換ができる、ある特別なRFパルスが必要なのです。

このことは、誰かがあなたのことを見ている状態に似ています。

あなたはそれに気が付かないかもしれません。

それはエネルギーの交換がないからで、あなたは位置や並び方を変えたりしません。

しかし、誰かがあなたを蹴飛ばして、あなたとエネルギーの交換をしたら、あなたのそれまでの状態は乱されるでしょう。

それと同じように、それまで陽子が並んでいた状態を変えるためには、陽子とエネルギーの交換ができるある種のRFパルスが必要になるのです。

しかし、RFパルスはいつ陽子とエネルギーの交換ができるのでしょうか。
そのためには、RFパルスは陽子と同じ周波数、すなわち同じスピードをもっていなくてはなりません。

あなたはレース場を走る車に乗っていて、隣の車線を走っている人が、エネルギーを交換するために、あなたにサンドイッチを渡そうとしているところを想像してみてください。

このエネルギーの伝達は、両方の車が同じスピードで走っている時、言い換えればレース場を同じ周波数で回っている時に可能になるのです。
スピードまたは周波数が違うと、少ししか、あるいは全く、エネルギーを伝達することはできません
 

(陽子とラジオ周波数(RF)パルスが同じ周波数である場合には、
エネルギーの交換が可能である。)


どの位のスピードを、より正確には、どの程度の周波数を陽子はもっているのか


陽子はラーモア方程式で計算される周波数で歳差運動をしています。
従って、ラーモア方程式から、私たちが使うRFパルスの必要な周波数がわかります。
RFパルスと陽子が同じ周波数の時にだけ、陽子はラジオ波からエネルギーを受け取ることができ、この現象を共鳴(resonance)と呼びます。
共鳴という言葉は音叉を使うことで説明できます。
今あなたは異なった種類の音叉、例えばイ音、ホ音、ニ音に調律されている音叉を持って部屋の中にいると思ってください。

そこで、誰かがイ音の周波数の音叉をならしながら部屋に入ってきます。
部屋にある全部の音叉の中から、突然イ音の音叉だけがエネルギーを受け取って、振動を始め、音が出てきます。
これが共鳴という現象なのです。





このRFパルスを受けた時、陽子には何が起こるのか


陽子の中には、エネルギーを受け取るものがあり、低いエネルギーレベルから高いエネルギーレベルに移ります。

 
 (RFパルスは陽子とエネルギーの交換を行う(a)。いくつかの陽子は高いエネルギーレベルになって、図中で下向きになる(b)。結果として、下向きの陽子が同数の上向きの陽子を中和するために、z軸に沿った磁化は減少する。)
足で立って歩いていた陽子の中から逆立ちをして手で歩きだすものが出てくるのです。
そして、この事は磁石の中にいる患者の磁化に影響を与えます。

上の図のように、RFパルスが送られた後は、上を向いている合計6この陽子の中から、2個の陽子が下を向きます。
その結果、この2個の陽子は上を向いている同数の陽子の磁力と打ち消しあいます。

そのために、実質上、縦方向の磁化は6個から2個に減少します。
しかし、その他に何かが起こります。

ラジオ波の形はどのようなものだったか覚えていますか。
次の図を見てください;それはむちに似ています。


そして、ラジオ波はむちのような作用ももっています

 (ラジオ波は陽子に対して二つの効果を持っている。まず、いくつかの陽子を高いエネルギーレベルに引き上げ(陽子は下を向く)、そして、それぞれの陽子の歩調を併せ、位相を揃えて歳差運動を行わせる。前者により、z軸に沿った磁化、すなわち縦磁化は減少する。また後者は、歳差運動をする陽子とともに回る新たな横磁化をx-y平面上(細い矢印)に作り出す。)
ラジオ波は歳差運動をしている陽子を同調させることができ、このことには、もう一つの重要な効果があります。
陽子がばらばらに左を向いたり、右を向いたり、後ろを向いたり、前を向いたりしている時は、これらの方向の磁力は打ち消しあっています。

RFパルスによって、陽子はもはや勝手な方向を向かず、足並みを揃え、同調して動きます。

陽子の位相が揃っているということです。

この状態では、陽子は同時に同じ方向を向き、磁気ベクトルはこの方向に足し合わされます。

この結果、磁気ベクトルは歳差運動をしている陽子が向いている方向、すなわち、横方向を向きます(上図の細い黄色矢印)。
このことから、このベクトルは横磁化と呼ばれているのです。


この状態は船に似ています。

位相を揃えて歳差運動をしている陽子により、新たな横磁化ができる。)
船の乗客がデッキのいろいろな場所にばらばらに分散しているところを想像してみましょう。

この時、船は正常な位置にあります。

そこで、すべての乗客が歩調を併せて、手すりの周りを歩きます。どうなると思いますか。
船は乗客がいる側に傾きます。

新しい力ができ、船が傾くことで、その力が目に見えるようになったのです

上で説明したように、RFパルスは横磁化を作り出します。
この新しく作り出された磁気ベクトルは本来じっとしてはおらず、歳差運動をしている陽子と調和して、歳差運動の周波数で動きます

新しく学んだことはどんなことだっただろうか

次の図を使って繰り返してみましょう!

  • 強い外部磁場の中では、患者内に外部磁場の方向に沿った新しいベクトルができる(a)。
  • RFパルスを送ると、縦磁化が減少するとともに、新たな横磁化ができる(b)。
  • RFパルスによっては、縦磁化が全くなくなってしまうこともある(c)。
患者がMR装置の中に入った時、陽子は装置の磁場に平行、あるいは逆平行に整列する。
患者内にできる磁場は外部磁場に対して縦方向になる(図a)。

陽子の歳差運動の周波数と同じRFパルスを送ると二つのことが起こる:
-いくつかの陽子はエネルギーを受け取って、逆立ちして手で歩くようになり、その結果全体の縦磁化の大きさは減少する。
-陽子は同調し、位相を揃えて歳差運動をし始める。
そこで、それぞれの陽子ベクトルは外部磁場に対して横の方向に足し合わされ、横磁化ができる。

まとめると:RFパルスは縦磁化を減少させ、新たな横磁化を作り出す

今回のところまでで、患者さんがMRIの中に入ったときの状態と、画像を作るための信号をラジオ波で送る説明の始まりまで進んできました。ここから、どんどん専門的な話に入っていきます。

次章もお楽しみに!よい1日を!


※「やさしいMRI」の参考文献は原文がインターネットに公開されており、誰でも閲覧可能なMRI made easy(…well almost)」です。 本ブログは、この原文を参考に記述しています。図も引用させていただいております。
原文の複製や販売を目的としたものではありません。