もう一つ別の実験をしてみましょう。
これは、次の図に説明されています。図(a,b)には、異なった緩和時間を持った2つの組織、AとBがあります(Aの方が、縦緩和時間、横緩和時間ともに短くなっています)。
この時間の後に二つ目の90°パルスを送ると、両組織には、最初のRFパルスの後に観察されたFrame1のと同様の大きさの横磁化ができる(Frame6)。
図a:
AとBは異なった緩和時間をもつ二つの組織である。
Frame0は90°パルスを送る前、Frame1は90°パルスの直後の状態を示している。
長い時間(TRlong)待ったあとには、二つの組織の縦磁化は完全に回復している(Frame5)。
この時間の後に二つ目の90°パルスを送ると、両組織には、最初のRFパルスの後に観察されたFrame1のと同様の大きさの横磁化ができる(Frame6)。
図b:
図aほど長く待たないで、二つ目のRFパルスをより短い時間のところで送ると、T1の長い組織Bの縦磁化は、短いT1の組織Aほど回復していない。
従って、二つ目のRFパルス後の両組織の横磁化は異なっている(Frame5)。
このように、連続するRFパルスの間隔を変えることによって、磁化の大きさと組織の信号強度に影響を与え、変化させることができる。
90°RFパルスを送り、ある時間(TR long)待ちます(なぜTRという言葉を使うかは後で説明します)。
そして、2回目の90°パルスを送ります。
どんな事が起こるでしょうか。
時間TR longの後には、組織Aと組織Bは完全に縦磁化を回復しているので(図中Frame5)、2回目のパルスの後の横磁化は、Frame1のように両組織とも同じです。
パルスからパルスまで、あまり長く待たなければどうなるでしょう。
上の図bを見てください。
ここでは、2回目のRFパルスは、時間TR shortの後に送られます。
すなわち、Frame4のあとにRFパルスを送ります。
この時に組織Aは組織Bよりも大きな縦磁化の回復があります。
ここで、2回目の90°パルスが縦磁化を90°傾けますが、組織Aの横磁化ベクトルは、組織Bの横磁化ベクトルよりも大きくなります。
このAのベクトルの方が大きい時には、これがアンテナに近づき、ベクトルAの先端の想像上のベルはベクトルBよりも大きく、強い信号をマイク、すなわちアンテナに発生させます。
この実験の信号強度の違いは縦磁化の違いによって起こっています。
そして、これは各組織間のT1の違いによって起こっているということを意味しています。
このように、これら2つのパルスを使って、組織Aと組織Bとを区別できるのです。
このことは、たった一つの90°や、間隔の長い2つの90°パルスを使ってはできないことです(二つの90°パルスの間隔が長いと、この時間の後には、よりT1の長い組織Bも、もとの状態に戻ってしまうために、この実験では、組織Aと組織BのT1の違いが役に立たないのです)。
複数のRFパルス(連続したRFパルス)を使うときには、いわゆるパルスシーケンス(パルス系列)というものを使います。
90°や180°パルスなど異なったパルスを使ったり、連続したパルスの間隔も設定できるため、多くのパルス系列ができます。
これまでの実験でみてきたように、パルス系列の選択で組織からどんな種類の信号を得るかがきまります。そのため、特定の検査のためには、パルス系列を注意して選択し、かつ記載しておくことが必要です。
これまで使ったパルス系列は、90°パルスという一種類だけのパルスを使ってできていました。
これは、ある一定の時間毎に繰り返され、この時間をTR= time to repeatと呼びます。
これまでの実験で、TRは信号にどんな影響を与えていたか
長いTRでは、二つの組織からは同じような信号が得られ、MR画像上も同じようにみえていました。
短いTRを使うと、組織のT1の違いによって決定される二つの組織間の信号の違いがありました。
そのようにT1の違いがあらわれている画像はT1強調画像と呼ばれます。
このことは、組織間の信号強度の違い、すなわち組織コントラストは主に主にそれらの組織のT1の違いによって起こっているということを意味しています。
しかしながら、組織コントラストに影響を与えるパラメーターは常に一つ以上あり、ここでの例では、T1がそのうち最も影響を与えるパラメーターになっているのです。
本章は以上です。
よい1日を!
※「やさしいMRI」の参考文献は原文がインターネットに公開されており、誰でも閲覧可能な「MRI made easy(…well almost)」です。
本ブログは、この原文を参考に記述しています。図も引用させていただいております。
原文の複製や販売を目的としたものではありません。
0 件のコメント:
コメントを投稿