T2強調画像はどのようにしてできるのでしょう。
これを理解するのは少し難しくなります。
これを理解するのは少し難しくなります。
そこで、前のとは少し違った実験をしてみましょう。
前の実験を思い出しながら、想像してみてください。
最初に90°パルスを使います。縦磁化が傾けられ、横磁化ができます。
最初に90°パルスを使います。縦磁化が傾けられ、横磁化ができます。
このパルスの後の短い時間内に何がおこるのでしょうか。
この問いにはすぐに答えられなくてはなりません。
パルスが切られた後には、縦磁化が再び現れ始めますが、横磁化は消え始めます。
横磁化はどうして消えていくのでしょうか。
陽子の位相がそろわなくなるということについては、もう知っています。
このことが図で三つの陽子について説明されています。
(RFパルスが切られた後は、陽子は位相がばらけてくる(a-c)。
180°パルスは陽子が行く方向に歳差運動するように作用し、陽子の位相は再びそろうことになる(d-f)。)
これらの陽子は、(a)ではほとんど位相が揃っていますが、異なった歳差運動の周波数を持っているため、次第に広がっていきます(bとc)。
位相の一致が失われる結果、横磁化は減少し、信号はなくなります。
ここで、ちょっと新しいことをしてみましょう。
ある時間経過した後(この時間をTEの半分の時間TE/2と呼びますが、この理由はすぐにわかります)、180°パルスを送ります。
これはどんな役割をするのでしょうか。
180°パルスはゴムの壁のような働きをします。
それは、図dでは時計方向で示されているように、陽子がちょうど反対方向を向いて歳差運動をするように、方向転換させるような作業です。
その結果、より速く歳差運動をしていた陽子が、今度はゆっくり歳差運動していた陽子の後ろになります。
その後、TE/2時間待つと、速い陽子が遅い陽子に追いつきます(図f)。
その時には、陽子はほとんど位相が揃っていて、大きい横磁化を持つようになっているので、信号は再び強くなります。
しかし、またもう少し後には、速い歳差運動の陽子が先に進み、信号は再び減少します。
これを説明すると:
ある時間経つと(TE/2)、兎が亀よりも先を走っています。
ここで、両者を反対方向に同じ時間走らせると、共にスタートラインに全く同時にもどります(常に一定のスピードで走ると仮定して)。
先の実験での180°パルスは、音をこだま(エコー)として反射する山のように陽子を跳ね返らせる壁のような作用をします。
そのために、その結果生じる強い信号は、エコー、あるいはスピンエコーともよばれます。
そのスピンエコーの信号が生じた後は、陽子は再び位相の一致がなくなり、これまでに習ったように、速い陽子が先に行くようになります。
普通は、その次にもう一つの180°パルス、また次の180°パルス…、というように、この実験を繰り返して行うことができます。
その結果を、時間と信号強度のグラフにして表すと次のような曲線になります。
図の説明:
- 180°パルスは、バラバラに広がっていた陽子を、再び一つに集め、その結果、TE時間後に、スピンエコーと呼ばれる強い信号が発生する。
- 陽子はその後、また広がり始め、180°パルスでまたひとつに集められるというように、これを繰り返し行うことができる。
- このように、一つ以上の信号、一つ以上のスピンエコーを得ることが可能である。
- しかし、それぞれのスピンエコーは、いわゆるT2効果により、それぞれの信号強度は異なっている。
- 各スピンエコーの信号強度を繋いだ曲線をT2曲線と呼ぶ。もしも180°パルスを使わなければ、信号強度の減弱はもっと速くおこる。
- そのときの信号強度を示す曲線はT2スター曲線と呼ばれる。
この曲線から、180°パルスの結果生じる信号、すなわちスピンエコーは時間とともに減少しているのがわかります。
このことは、180°パルスが外部磁場に恒常的な不均一性があることによって、陽子が影響を受けた結果だけを”中和”しているということを示しています。
組織内部の局所磁場によって起こる一定でない不均一性については、180°パルスの前と後とで、陽子に異なった影響を与えているかもしれず、その結果を”同時にならす”ことはできません。
従って、まだ陽子のいくつかは、同時にスタートラインに戻る大多数の陽子の後ろあるいは前に存在していることになります。
すると、エコーごとに、いわゆるT2効果のために信号強度は減少してゆきます。
このことは、次の例によって説明した方がいいかもしれません。
(バスが戻ってこないと(180°パルスないしでは)、信号の減少が組織に固有の性状(バスの乗客の状態の違い)によるものか、外部の影響(バスのスピードの違い)によるものか判断することはできない。)
(バスが戻ってこないと(180°パルスないしでは)、信号の減少が組織に固有の性状(バスの乗客の状態の違い)によるものか、外部の影響(バスのスピードの違い)によるものか判断することはできない。)
乗客で満員になっている2台のバスがあります。
まず、同じスタートラインに立っています。
2つのマイクロンフォンで、それぞれのバスから聞こえてくる信号(乗客の歌声)を記録しています。
バスが同じ方向に遠ざかっていくと、一方の信号が他方よりも速く消えていくのがわかるかもしれません。
これには二つの異なった理由があります。
一台のバスの方が、もう一台のバスよりも速く走っているかもしれません(この場合、信号がなくなる原因は外部磁場の不均一性のように外部からの影響によるものといえます)。
あるいは、信号強度の違い、ここでは歌声の大きさの違いは、二つのグループの固有な性質の違い(内部の不均一)によるものかもしれません。
一方のバスには”パーティ人間”だけが乗っていて、他のバスの乗客のようにはすぐに疲れてしまわないのかもしれません。
信号がなくなる本当の原因をはっきりさせるためには、ある時間TE/2後に、バスを逆戻りさせて、同じスピードで、またTE/2時間走って戻らせればいいのです。
時間2×TE/2=TE後には、バスはスタートラインに戻ります。
その時には、マイクロフォンから記録される信号強度は内部の性質、すなわち乗客がどれくらい疲れているかだけによって決まります。
もしも、外部の不均一性を中和するために180°パルスを使わなければ、陽子はRFパルスが切られたとき、より大きな磁場強度の違いを経験することになります。
そのため、陽子は早く位相が揃わなくなり、横緩和時間は短くなります。
この、より短い横緩和時間を、180°パルスの後のT2と区別するために、T2スターと呼びます。これに対応した効果をT2スター効果と呼びます。
T2スター効果は、いわゆる高速撮像シーケンスで重要になります。
バスの例では、バスが走って遠ざかる時の信号だけを記録しています。
信号の消失はこれらの状況の中で、外部(バスのスピード)と内部(乗客の疲労)の性質に依存しています。
この実験で使ったパルス系列は、90°パルスと180°パルスからなり、その結果(エコーを発生させる)スピンエコーシーケンスと呼ばれています。
このパルス系列はMRイメージングでは、非常に重要であり、パルス系列中でとりわけよくつかわれ、多くの事に利用されています。
スピンエコーシーケンスを使うと、T2強調画像のみならず、T1強調画像、プロトン密度強調画像を作ることができるという事は、覚えておくことが必要ですが、このことについては、少しあとで触れることにします。
本章はここまでです。
よい1日を!
※「やさしいMRI」の参考文献は原文がインターネットに公開されており、誰でも閲覧可能な「MRI made easy(…well almost)」です。
本ブログは、この原文を参考に記述しています。図も引用させていただいております。
原文の複製や販売を目的としたものではありません。
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