もう少し、TRの長さについて考えていきましょう。
1.5テスラ前後の外部磁場では、一般的に、
1.5テスラ前後の外部磁場では、一般的に、
- 500msecより小さいTRは短い
- 1500msecよりも大きいTRは長い
既に気づいているか、あるいは知っている方もいると思いますが、T2強調画像や、プロトン密度(強調)画像というものも作ることができます。
プロトン密度はスピン密度とも呼ばれ、組織コントラストに影響を与えますが、このことは極めて容易に説明できます。
すなわち、陽子(プロトン)のないところには信号はなく、陽子の多いところには多くの信号があります。このことについてはあとでさらに検討します。
要点は、ある特定のパルス系列を使うと、その結果できる画像上である組織の特徴を重要なものにしたり、重要でないものにしたりすることができるということです。
パルス系列を選ぶという事では、医師や装置の操作者はオーケストラの指揮者に例えることができます。指揮者はある楽器(パラメータ)を目立たせることで、曲(信号)の全体的な雰囲気を変えることができます。しかしながら、すべての楽器は常に出来上がった音楽の中である種の役割を果たしています。
(MRI診断を行う医師や画像を取得する技師などの操作者は、指揮者に例えることができる。あるパルス系列を選択することで、異なったいくつかのパラメーターの影響を受けるMR信号を変化させることができる。)
もう一度短い繰り返し時間(TR)の実験を振り返ってみよう
ある種のRFパルスによって縦磁化をなくすことができますが、その一方では横磁化が出現します。
この場合には、正味の磁化が90°傾けられたことになります。
従って、このRFパルスの事を90°パルスと呼びます。
正味の磁化の横方向成分はアンテナに測定できる信号を発生させます。RFパルスの直後から、緩和が始まります。
横磁化は減少し始め、縦磁化は再び現れ始めます。
総和磁化ベクトルは元の縦方向に戻り、信号は消えます。
次のRFパルスを送ると、正味の磁化は再び90°傾き、また信号が発生します。
この信号の強さは、とりわけ始めの縦磁化の大きさに依存しています。
T1曲線を覚えていますか?
T1曲線は時間と縦磁化の大きさとの関係を表しています。次のRFパルスまでの時間が長いと縦磁化は完全に回復しています。従って、次のRFパルス後の信号は、最初のRFパルス後の信号と同じになります。
しかし、次のRFパルスまでの時間が短いと、そのときの縦磁化の大きさは、前の場合より小さいので、信号は違ってきます。
次の図には脳と脳脊髄液のT1曲線がプロットされています。
(脳はCSF(脳脊髄液)よりも縦磁化が短く、TRが短い方が、長いTRのときよりも脳とCSFの信号強度の違いは大きくなっている。)
時間0のときには、縦磁化は全く存在しておらず、これは最初の90°パルス直後に相当しています。
次に90°パルスを繰り返すまでの時間が長いと(TR long)、縦磁化はかなり大きく回復しています。
90°傾けられる縦磁化ベクトルの違いは非常に少なく、信号の差、すなわち脳と脳脊髄液との組織コントラストはほとんどなくなります。
しかし、次のRFパルスを短い時間TRshortの後に送ると、縦磁化の違いはかなり大きく、組織間のコントラストはもっとつくようになります。
二つの曲線の上下の間隔からわかるように、組織コントラストが最も大きいところには、ある程度の幅があります。
パルス間の時間TRが非常に長い時に、信号が同一にならないのはどうしてか
このことについては、すでに説明されています。
信号強度は多くのパラメーターから決まります。
長い時間待つと、T1は組織コントラストに影響を与えなくなりますが、問題としている組織にはまだプロトン密度に違いがあるかもしれません。
そして、上の図(脳と脳脊髄液)の実験で非常に長い時間TR待った後では、信号の差は主にプロトン密度の違いによるものになり、プロトン密度強調画像が得られます。
さあ、これでT1強調画像とプロトン密度強調画像については勉強がすみました。
本章は、ここまでです。
よい1日を!
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※「やさしいMRI」の参考文献は原文がインターネットに公開されており、誰でも閲覧可能な「MRI made easy(…well almost)」です。
本ブログは、この原文を参考に記述しています。図も引用させていただいております。
原文の複製や販売を目的としたものではありません。
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