前章から、横磁化について学んできました。
本章でも、より詳しく学んでいきましょう。
横磁化にはどんなことが起こるのだろうか
RFパルスが切られると、だれも歩調を揃えたままでいるように命令しなくなるので、陽子は歩調が乱れ、再び位相がずれてきます。
本章でも、より詳しく学んでいきましょう。
横磁化にはどんなことが起こるのだろうか
RFパルスが切られると、だれも歩調を揃えたままでいるように命令しなくなるので、陽子は歩調が乱れ、再び位相がずれてきます。
わかりやすくするために、このことは次の図にすべて上向きの陽子の集まりとして説明されています。
(RFパルスが切られた後は、陽子は位相が揃わなくなり、ばらばらになっていく。陽子の位相がずれていく一連の過程を上から見てみると(図の下方)、どのようにそれぞれの陽子が広がっていくのかはっきりしてくる。広がりながら、次第に同じ方向は向かなくなり、横磁化は減少してくる。)
陽子は、それが置かれている磁場の強さによってきめられている、一定の周波数で歳差運動をしているということはすでに勉強しました。
そして、すべての陽子が同じ磁場を体験します。
しかし、そうでない場合もあります。
患者がはいるMR装置の磁場は常に変化しないものではなく、また、完全に均一なものでもありません。
それは少し変化して、異なった歳差運動の周波数を作り出します。
そして、それぞれの陽子は、これもまた均一には分布していない隣り合った核からの小さな磁場によって影響され、それによっても、また歳差運動の周波数が異なってきます。
これらの内部磁場の変化はどういうわけか各組織で特有なのです。
従って、RFパルスが切られた後、陽子は一致してまとまっているようにさせるものがなくなり、歳差運動の周波数も違ってくるので、すぐにそれぞれの位相がバラバラになります。
どのくらい早く陽子の位相がバラバラになるかを調べることは、面白いことです。
一つの陽子(P1)は、10MHz(1秒間に1000万回転)の周波数で回っていると思ってください。
磁場の不均一性のために、隣にある陽子(P2)は1%強い磁場のところにあるとすると、このプロトンP2の歳差運動の周波数はP1よりも1%大きく、10.1MHzになります。
5μ秒(0.000005秒:5×10(-6)秒)の間に、陽子P1は50回転するのに対して、陽子P2は50.5回転します。
したがって、この短い時間の間に、これらの二つの陽子は180°位相がずれ、それぞれの面内の磁気モーメントを打ち消し合うことになります。
縦磁化について検討したのと同様に、横磁化と時間との関係をプロットすることができます。
すると、次の図のような曲線が得られます。
そして、おそらくあなたが期待しているように、横磁化がいかに早く消えていくか、下り坂を下ってゆくかを表す時定数があります。
この時定数は横緩時間T2です。
T2とはなんなのかをどう覚えたらいいでしょう。
T2=T×2=TT=Ttであり、これは”T transverse”を表し、横磁化の緩和を意味しているのです。
そして、この図にみられる曲線は、T2曲線と呼ばれます。
横緩和のもう一つの呼び方をスピン-スピン緩和といい、その基礎となるメカニズムであるスピンとスピンの相互作用を思い起こさせます。
T1曲線とT2曲線の見分け方はどのように覚えたらいいのでしょうか。
それには、二つの曲線を重ね合わせてみてください。
スキーのスロープのある山のように見えませんか。滑り降りる(T2曲線)の前にはまず上り坂を登らなくてはなりません(T1曲線)。
(T1曲線とT2曲線を一緒にすると、スキーのスロープがある山のようにみえる。
山を登る方が、滑ったり、ジャンプして降りたりするよりも長い時間がかかる。このことは、普通はT1がT2よりも長いという事を覚えるのに役立つ。)
復習してみよう
これまで勉強したことは
- 陽子は小さな磁石のようなものである。
- 外部磁場の中で、陽子は平行または逆平行に並ぶ。
- 低いエネルギーの状態(平行)のほうが、選択されやすく、このように並ぶ陽子の方が少し多い。
- 陽子はたたかれてぐらぐら揺れているコマに似たような動きをする。
- この動きは歳差運動と呼ばれる。
- 歳差運動の周波数は外部磁場の強さに依存する(この関係はラーモア方程式で表される)。
- 磁場が強い程、歳差運動の周波数は高くなる。
- 反対方向を向いている陽子は、それぞれの方向でお互いの磁気効果を打ち消し合う。
- 外部磁場と平行に並んでいる陽子の方が多いために、外部磁場の方向に並んだ、あるいは外部磁場に対して縦方向の、正味の磁気モーメントが存在する。
- 歳差運動している陽子と同じ周波数のラジオ周波数パルスは、陽子にエネルギーを伝達して共鳴を起こすことができる。
- この結果、より多くの陽子が逆平行になり、反対側にある、より多くの陽子と中和、すなわち打ち消し合うことになる。
- RFパルスにより、陽子は歩調をあわせ、位相を揃えて歳差運動をするようにもなる。
- その結果、新たな磁化ベクトルである、横磁化ができる。
- RFパルスが切られた時には、
- -縦磁化が再び増加する。この縦緩和は時定数T1(縦緩和時間)で表される。
- -横磁化は減少し、消失していく。この横緩和は時定数T2(横緩和時間)で表される。縦および横緩和は、異なった、独立した過程であり、そのためにこれらの過程を別々に検討した。
今までのところでは、以上のようなことを理解できました。
次回は、緩和時間について考えていきたいと思います。
よい1日を!
次回は、緩和時間について考えていきたいと思います。
よい1日を!
※「やさしいMRI」の参考文献は原文がインターネットに公開されており、誰でも閲覧可能な「MRI made easy(…well almost)」です。
本ブログは、この原文を参考に記述しています。図も引用させていただいております。
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原文の複製や販売を目的としたものではありません。
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